cool vienna!

ひょっとしてひょっとするとcool、かも知れないvienna。

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桜と桃と高楊枝と
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ウィーンは、すっかりサクランボの季節です。
私が、ウィーン人によく聞かれることのひとつに、「トーキョーにはたくさん桜の木があるのだから、花のあとにはサクランボもそこらじゅうに成って、よく食べているのでしょうね?」っていうのがあります。私は、桜の木のシステムについてはほとんど何も知らないけど、どう思い起こしても、成らないよなぁソメイヨシノにサクランボ…。靖国神社でサクランボ狩りって聞いたことないもの。もしも東京にあるあれだけたくさんのソメイヨシノの木に、夏のはじめの頃、ほんとにサクランボがたわわに成ったとしたら、すごいだろうな東京。そうしたら、東京銘菓もサクランボにちなんだものがたくさん。サクランボ大福、サクランボ…、えっとサクランボ…、サクランボなんだろ、佃煮?…とにかくたくさん。ところで、サクランボは桜桃とも呼ばれていて、桜だけでも美しいのにその上桃だなんて、まったくその通りの見た目だし、なんだか奥ゆかしくて詩的な名前です。お値段的な側面からも無意識のうちに影響を受けているのか、とても儚(はかな)げな響きです。そして知る人ぞ知る「桜桃忌」。太宰です。ザ・儚げ人間です。実は、この太宰治のお墓があり、毎年6月に「桜桃忌」が行われる東京の禅林寺は、私の実家のすぐそばなのです。禅林寺には太宰だけではなくて、あの森鴎外も眠っています。このお寺は、ただ実家のそばにあるってだけで、ほかには私と縁もゆかりもないのだけど、これ、一応自慢のタネにしていますから。それで、あまり大きいわけじゃなく、どちらかと言うとこぢんまりとしたその墓地のいちばんどん詰まりに、大きなソメイヨシノが一本あります。その木が満開になると、それはそれは美しく、壁の高さよりはるかに高い枝振りの3分の1くらいが、ちょうど裏手にある駅に続く細い道に出ているので、その時期はそこを通るたびに私はすっかりココロ奪われ、夢心地でしばらくのあいだ立ち止まってしまいます。いろいろな桜の木を見たけど、結局それがマイ・ベスト・オブ・桜の木だと思うのです。墓地の壁をつたうようにしてハラハラと舞う桜の花びらは、太宰が眠っている場所にふさわしく、どこか憂いを含んであの世的に儚げなのでした。と、そんなことを遠い目で話す日本人代表の私に、「たとえキレイでもさぁ、やっぱり実が成らなくちゃねぇ」とがっかりした様子のウィーン人たちに言うよ、キミらは何も分かっちゃいないのさ。
| manakuma | food + drink | 17:00 |